平成29年度『UECパスポートセミナー』の講義内容

1年次の後期(第2学期)に理工系教養科目として『UECパスポートセミナー』を開講します。このセミナーは,それぞれの分野で研究をされている学内の5名の先生方の講演と学内研究設備での実習,学外の5名の先生方の講演と学外の研究施設・研究所の視察からなるユニークなセミナーです。

学外研究施設見学

今年はUECパスポートセミナー履修者限定バスツアー見学と,パスポートセミナーで講演いただく先生方の研究施設・研究所の見学を予定しています.詳細はこちら

12月14日(木)

バスツアー見学説明会

12月26日に開催する産業技術総合研究所バスツアー見学についての説明と参加希望調査を行います.

学外講師による講演内容

 

1月25日(木)

理化学研究所 仁科加速器研究センター 加速器基盤研究部 イオン源開発チーム 技師 長友 傑 先生

第11回講演タイトル:加速器の基礎と応用研究

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  理化学研究所の仁科加速器研究センターの加速器施設において、113番元素の合成・分離・同定に成功し、2016年末に周期表に「ニホニウム」の名前が刻まれました。これはアジア初の快挙であり、皆さんの記憶にもおそらく残っているニュースだと思います(詳しくは、www.nishina.riken.jp/113/)。  さて、この業績の鍵となった技術の一つは加速器技術です。加速器とは、電荷を持ったイオンや電子を、電場を用いて100万電子ボルトから10兆電子ボルトを超えるエネルギーまで加速し、ビーム化する装置のことです。加速器の発達により、陽子からウランまで様々なイオンを、高エネルギーで大強度ビーム化することが可能となってきました。先に述べた原子核の研究の他、ヒッグス粒子の発見でニュースとなった原子核よりも小さな素粒子の世界の研究、ビームの照射によるがん治療・植物の品種改良、中性子やミューオンを用いた物性の研究、核廃棄物の消滅研究等々、多岐に渡った研究が全世界で展開されています。本講義では、イオン加速の基礎を学びその応用研究の一部を紹介します。

キーワード

イオン源、加速器(線形加速器、サイクロトロン)、電磁気学

レポート課題
  1. ビームを曲げる際には磁場を用いますが、荷電粒子は磁場中で特徴的な「サイクロトロン運動」をします。サイクロトロン運動とその特徴を説明しなさい。
  2. ビームのエネルギーは無限に加速することはできません。あるエネルギー以上に到達しようとすると困難が生じるためですが、その困難とは何でしょうか。
見学日程
  • 2月23日(金)

1月18日(木)

国立天文台 総合研究大学院大学 理論研究部 教授 吉田 春夫 先生

第10回講演タイトル:力学の解ける問題と解けない問題

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 運動の第2法則はニュートンの運動方程式と呼ばれる微分方程式である。この方程式を与えられた初期条件から、任意の時刻での位置・速度を求めることを、力学の問題を解くという。自由粒子の運動、単振動、そして惑星運動に代表されるケプラー運動などではこの過程が解析的に実現され、時間の関数としての解の表式を求めることが可能である。しかしこれは希なことで、3質点が重力相互作用する3体問題では、解の表式を求めることが原理的に不可能になる。つまり3体問題は解析的には解けない。

この解ける・解けないの差異は、考えている問題の質的な差異に起因する。可積分系と呼ばれる「解ける」力学系においては、全ての軌道は周期的または準周期的であるのに対し、非可積分系ではカオス的な軌道が出現する。両者の差異はコンピュータで運動方程式を数値的に解くことによって確認できる。全エネルギー以外の運動の保存量の存在の有無が両者を分けるからである。

与えられた力学の問題が解析的に解けるか否か、という可積分性の判定は困難な問題であったが、20世紀の終わり頃から運動方程式を複素変数で記述する手法によって大きな進展があり、現在も進行中である。

キーワード

ケプラー運動、3体問題、可積分系、カオス

レポート課題
  1. バネでつながれた物体の振動を記述する単振動の運動方程式を解け。
  2. ケプラー運動を記述する運動方程式から、その軌道が2次曲線となることを示せ。
見学日程
  • 3月5日(月)

1月11日(木)

国立極地研究所 所長 中村 卓司 先生

第9回講演タイトル:南極・北極から見る地球と宇宙の過去・現在・未来−−先端的観測技術、解析技術、分析技術でさぐる我々の生存環境の将来−−

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地球上の氷の約90%が存在する巨大な氷床を有する南極大陸、氷の総量こそ南極の1割程度であるが、温暖化にともなう海氷面積の急激な減少やグリーンランド氷床の急激な縮小で近年の環境変化が急速な北極域。たとえば、北極グリーンランドの氷がすべてとけると世界の海面は数m上昇するといわれており、仮に南極大陸から氷がすべて融け出すと海面はその10倍すなわち数10mも上昇する可能性がある。巨大な氷の極域はまた地球や太陽系の歴史・記録を留めている点も重要である。 それぞれの年代の大気が閉じ込められている氷床コアを掘削して分析することで過去数十万年の気候変動を復元することができるほか、南極では隕石も大量に収集されている。極地はまた宇宙に開かれた窓ともなっている。太陽や宇宙から飛来する荷電粒子のエネルギーは磁力線に沿って極地に降り注ぎオーロラとなり、ときには衛星や地上の設備にもダメージを与える。超低温・低湿度の南極内陸は電波天文・赤外線天文の格好の観測地でもある。  このような極地での観測・調査の重要性は、観測技術・解析技術・分析技術などの技術の近年の発展にともなって益々意義を増している。アクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナで各種のイメージング観測も可能な南極昭和基地大型大気レーダー(PANSY)は南極唯一の大気観測用大型レーダーである。アイスコア中の過去の気体の分析では、正確な年代測定と微量なサンプルの分析が成果の鍵を握るが世界最高の分析精度の装置を自前で開発して成果を創出している。極地研の二次イオン質量分析装置(SHRIMP)は世界に19台ある同種の装置の中でも最高の精度での分析を誇っており、鉱物の微小領域を高精度で年代測定することで、地球や太陽系の歴史の解明に貢献している。  極地はまさに精力的な調査・観測の努力と、先端的工学技術で我々の地球や宇宙の過去、現在を知り、将来を見通す場となっている。講義ではこのような極地に関する研究の状況をレビューする。

キーワード

南極、北極、低温、電波工学、計測工学、同位体分析、地球惑星科学、太陽地球系物理学

レポート課題

(1)液体の水と比較して、氷の特徴や性質をできるだけたくさん列挙して説明せよ。

(2)南極にある4つの極点(極)について調べて、それぞれを説明せよ。

見学日程
  • 2月27日(火)

12月21日(木)

首都大学東京 理工学研究科 物理学専攻 ナノ物性研究室 准教授 宮田 耕充 先生

第8回講演タイトル:新しい二次元ナノ物質の発見と進展

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 2004年に,グラフェンと呼ばれる炭素の1原子厚の薄膜(図1)の発見が報告されました.この発見をきっかけに,厚みが原子1個〜数個程度の極限的に薄い膜(二次元物質,原子層とも呼ばれる)が近年大きな注目を集めています.グラフェンが多数重なった構造は鉛筆の芯などに含まれる黒鉛(グラファイト)と呼ばれる身近な物質ですが,以外にも単原子層が安定に存在できるかは分かっていませんでした.発見した研究者たちは,この黒鉛を粘着テープではがすという非常に簡単な手法で,1原子厚の膜を得ることに成功しました1原子圧の膜が安定に存在できるという驚きに加え,グラフェンは,その不思議な電気的性質や優れた機械的強度などにより世界中の研究者を魅了し,2010年にはノーベル物理学賞の対象となりました.また,潤滑剤にも含まれる二硫化モリブデン(図1)など様々な二次元物質が発見され,爆発的に研究が進展してきました.本セミナーでは,二次元物質の発見と最近の進展や,講演者が取り組んでいる異なる二次元物質を繋げる・重ねることによる機能性材料の開発に関する研究も含めて紹介します.

キーワード

ナノサイエン ス,二次元物質,グラフェ硫化モリブデン,半導体,ヘテロ構造

レポート課題
  1. 物質が原子1〜数個程度まで薄くなることで.どのような特徴が現れるかを説明して下さい.
  2. 二次元物質を利用した応用について興味を持った具体例を一つ上げ,原理等を含めて説明して下さい・
(それぞれ300字程度まで)
見学日程
  • 2月22日(木)

UECパスポートプログラム見学

12月14日(木)

A201でバスツアー見学説明会を聞いた後,UECパスポートプログラムのオープンラボ(D103他)を見学します.

研究設備センター見学

10月26日(木) 学術技師 小林 利章 先生

第3回講義:最先端の教育研究を支える寒剤供給体制

集合場所:A201
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 物性物理学,光科学,新しい機能を持つ電子デバイスの開発を目指す電子工学など実験的研究においては,温度を制御して対象の振る舞いを測定することや新規現象を実現させて観察することが重要な研究手法です.特に温度を下げて低温環境を実現することはとても重要な実験操作ですが,物体を冷却するためには様々な工夫が必要です.簡単な方法は低温の物体(寒剤)に対象を接触させて熱を奪うことです.液体窒素(77K)は安価に大量に使うことが出来るので沢山使われていますが,さらに低い温度を実現するためには液体ヘリウム(4.2 K)が利用されます.液体ヘリウムは超伝導コイルの冷却にも使われます.さらに冷凍機を利用し様々な手法を組み合わせることで,対象を絶対零度に限りなく近い超低温まで冷却することも可能です. ヘリウムは有限の地下資源であり,日本では全量を国外からの輸入に頼る貴重資源です。資源の有効利用を図るために本学ではヘリウム液化システムを整備し運用しています.ヘリウムの循環利用により貴重な資源を有効利用できるだけでなく,実験室で安価に液体ヘリウムを利用できるようになるので研究環境を整えるためにも非常に重要な設備です.ヘリウム液化システムは主要大学や研究所で運用されていますが関東でも数カ所のみであり,多摩地区では本学にしか置かれていません.

 今回はこのヘリウム液化システムを含めた寒剤供給体制の見学の他,研究設備センターが運用する測定装置類の見学も合わせて行います. 

キーワード

液体ヘリウム,液体窒素,低温実験

レポート課題

講義聞いて,また研究設備センターを見学して学んだこと,感想などを記載して,東1号館3階エレベータ前のポストに提出ください.

提出期限:10月30日(月)

学内講師による講演内容

詳細は随時,掲載していきます.

12月7日(木) 特任助教 赤石 暁 先生

第7回講義:計算機シミュレーションでみる水の性質

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水は地球上に広く存在して、我々の生活に欠かせない物質の一つです。とても身近にある水は、実 は他の分子には見られない多くの不思議な性質を持っていることが知られています。例えば、凍る と体積が大きくなる、4度Cで密度が最大になる、表面張力が大きいなどが挙げられます。このよ うな水の性質は未解決な問題も多く、現在でも多くの研究者が注目しています。近年では、コン ピュータの性能の向上により、シミュレーションで水の物性を明らかにしようという研究がなさ れています。最近、水がどのように凍るかが明らかになったのも、計算機シミュレーションのお かげです。

シミュレーションで水の物性を調べる手法として、大きく分けて第一原理計算と分子動力学法 との2つに分類されます。前者は電子も含めた水分子の状態を物理学の基礎原理だけで導くのに 対し、後者は水分子をモデル化することにより非常に大規模な計算をすることができます。我々 の研究室では、この両者を使い分けることで、水の基礎物性から様々な応用に役に立つ研究を行っ ています。本セミナーでは、水に関わる様々な研究結果について講義します。特に、炭素の2次元 物質であるグラフェン表面の濡れ性に関する講演者の最近の研究について紹介します。

キーワード

計算機シミュレーション、第一原理計算、分子動力学、水分子、水素結合、疎水性/ 親水性

レポート課題
  1. 計算機シミュレーションが身近に使われている例を挙げてください。
  2. 第一原理計算と分子動力学シミュレーションとの違いを述べてください。
  3. 分子動力学シミュレーションで水分子がどのようにモデル化されているか述べてください。
実習日程
  • 12月12日(火)16:30-17:15
  • 12月12日(火)17:15-18:00
  • 集合場所:西2号館329号室
  • 実習内容:計算機シミュレーション実習

11月30日(木) 教授 渡邊 信一 先生

第6回講義:2017年ノーベル物理学賞の背景

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2017年ノーベル物理学賞は“重力波の観測”に対して与えられる。そこで、関連する電通大の基礎科学研究にも触れながら、重力波観測の背景について述べたい。

1970年代の物理学生の多くは、一般相対論に基づく重力理論に強い関心を持っていた。実際、C.W. Misner、K. Thorne、J.A. Wheelerら三人の数理物理学者による重厚な教科書 “GRAVITATION” (1973年出版)を座右の書としていた者も少なくない。重力波は一般相対論から予言される重力の波動性に関わる現象だが、他の自然を支配する力(電磁気力、核力(強い力)、弱い相互作用)と比べると、重力は圧倒的に小さいことから、重力波の実験的観測は絶望的に困難で、アインシュタインの最後の宿題と呼ばれていた。1960年代にジョゼフ・ウェーバーが重力波観測を報じたことで、重力波は一躍研究者の注目を集めたが、残念にも実験結果は誤りであることが判明した。しかし、重力波観測の夢に火を付けた形となり、50年近い年月の末、2015年に最初のシグナルが検出された。

この快挙の陰にはいろいろな事情がある。一つには天体観測技術の向上で大きな質量をもつ天体が次々と発見されたことが挙げられるが、取り分けパルス的に光を発するパルサーと呼ばれる中性子星の発見がある。1980年代には実験と理論の見事な一致から、パルサー連星は重力波を放出しながらエネルギーと角運動量を失うことが示され、重力波の実在を示す決定的な傍証とされた。また、我々の銀河系の中心に太陽の400万倍ほど重い巨大ブラックホール(候補)が存在することも観測されるようになった。さらに、宇宙には多数のブラックホール連星が存在し、かなりの頻度で合体し、莫大なエネルギーを重力波として放出することも予想されるようになってきた。その試算に基づくと、超高感度マイケルソン干渉計で、ブラックホール連星や中性子星連星の合体で生じる重力波を、年に2−3回程度観測できることになる。超安定レーザー光、高度な除震技術、超高量子効率の光ダイオード、アダプティブ光学など、様々な極限的な技術を駆使して、それまで不可能とされていた10-20の空間歪をLIGOが感知した。これが、2015年の重力波の観測であった。

2017年に入り、LIGOは中性子星連星の合体を感知し、その情報に基づく光学的観測が世界の多くの天文台で行われた。中性子を過剰に持つ元素の生成に関わるデータを提供するものと期待される。重力波検出が、観測という面から天文学や宇宙論のみならず核物理や元素の分光学などに関わる様々な分野に、大きな進展をもたらすと期待するのは当然であろう。このような発見の背後にある基礎科学技術と電通大の関わりにも触れたい。

キーワード

重力波観測、LIGO、マイケルソン干渉計、巨大ブラックホール、ブラックホール連星、中性子星連星、特殊相対論、一般相対論

レポート課題

講義当日に提出するレポート課題:講義を聞いて,学んだこと,感想などを記述すること.

講義後一週間以内(12月6日まで)に東1号館3階エレベータ前のポストに提出するレポート課題:次のテーマの中から一つ選んで、調査、検討、計算、考察などを行い、その調査研究と思考の過程および自分なりの結論を、A4用紙1枚程度のレポートに簡潔にまとめなさい。

  1. 特殊相対論におけるドップラー効果とは何か?
  2. 特殊相対論におけるローレンツ収縮とは何か?
  3. 電波干渉の仕組みと最近のスペック
  4. 原子時計の仕組みと最近のスペック
  5. 太陽の100倍の質量をもつ2つの質点の回転周期を相対距離の関数として見積もる。
  6. (簡単な古典力学の見積もりでよい。)
  7. シュワルツシルドの解で rs > r のとき、遠心力は“遠心力”と言えるか?
  8. 重力波観測におけるレーザー光の反射用ミラーはどのように除震しているか?
  9. フォトダイオードと太陽電池に違いはあるか?
  10. 中性子星連星の重力波観測は原子核物理学に影響を与えるか?
  11. 重力による光の湾曲の計測実験にはどのようなものがあるのか?
実習日程
  • 12月20日(水)16:30-17:15
  • 12月21日(木)16:30-17:15
  • 集合場所:東6号館525号室
  • 実習内容:研究室見学と研究紹介

11月16日(木) 准教授 岸本 哲夫 先生

第5回講義:蛇口を捻れば絶対零度の世界が。を目指して

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日常的にはあまり触れることのない温度スケールとして,絶対温度というものがある.氷のできる温度は(摂氏)0度だが,絶対温度では約273ケルビン(K)となる. 他にもっと低い温度のものとして,液体窒素:-196度(約77K),液体ヘリウム:-269度(約4K)が挙げられる. ところが,これよりも遥かに”冷たい”nKのオーダーの世界を近年は創り出すことができるようになっている. このほぼ絶対零度という温度領域に到達するためには,レーザー技術の発展と冷却対象となる原子の内部構造や外場との相互作用の理解が不可欠である. この温度領域になると,粒子として扱ってきた気体原子の集団は波動性の振る舞いが顕著となり,ある転移温度を境にボース・アインシュタイン凝縮体と呼ばれる量子気体に相転移する. この量子気体を対象とした研究がこれまでに非常に多岐に渡って精力的になされてきた.

本講義では,これまで先駆者たちが歴史的に積み上げてきた理解と冷却技術をご紹介するとともに,最先端で行われている研究や,我々が現在目指している”蛇口を捻れば絶対零度の世界が”の入口の部分に触れたいと思う.

キーワード

絶対零度,レーザー冷却,量子気体,ボース・アインシュタイン凝縮

レポート課題
  1. 室温中(300K)で,ルビジウム原子(87Rb)気体は何m/sで飛んでいるか求めよ.
  2. レーザー冷却は,原子と光子の間の運動量の授受(光子の吸収・自然放出)によって行われる.波長780nmの光子一個の持つ運動量を求め,それを基に室温87Rb原子を減速するのに必要な光子の吸収・自然放出のサイクルの回数を求めよ.
  3. レーザー冷却が可能な粒子種は限られているが,その理由を述べよ.
実習日程
  • 12月13日(水)16:30-17:15
  • 12月20日(水)16:30-17:15
  • 集合場所:東6号館619号室
  • 実習内容:実験室および実験デモの見学

11月9日(木) 准教授 酒井 剛 先生

第4回講義:銀河系内での星形成

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我々の住む太陽系は、数千億個もの恒星の集団である銀河系の中に存在しています。 銀河系には、恒星だけでなく、恒星の元となる希薄なガスも大量に存在しています。 そのガスから、今現在も銀河系内の様々な場所で、恒星が誕生しています。 本講義では、まず、現在わかっている銀河系や宇宙の構造について解説し、その後、 銀河系内でどのように恒星が誕生しているのか説明します。

恒星は、その質量によって異なる一生を送ることが知られています。 本講義では、小質量星と呼ばれる、質量の比較的小さな恒星の一生と、大質量星と呼ばれる、 質量の比較的大きな恒星の一生について、最新の観測結果をふまえて解説します。 また、恒星の誕生を調べるために必要な電波望遠鏡についても解説します。 特に、最近、南米のチリに建設されたアルマ望遠鏡について紹介します。

キーワード

電波天文学、星形成、銀河系、電波望遠鏡

レポート課題
  1. 口径1m の光学望遠鏡と同じ空間分解能を、波長1mm を観測する電波望遠鏡で得るには、電波望遠鏡の口径は何m 必要でしょうか。 光学望遠鏡での観測波長を500nm として考えてください。
  2. 小質量星と大質量星の違いについて記述してください。
  3. 天文学で興味を持ったテーマなど、天文学についての感想を書いてください。
実習日程
  • 12月12日(火)16:30-17:15
  • 12月13日(水)16:30-17:15
  • 集合場所:東3号館10階ロビー
  • 実習内容:電波天文用受信機と電波望遠鏡による観測結果の紹介

10月19日(木) 准教授 渡邉 恵理子 先生

第2回講義:光干渉による顕微計測と情報処理

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身近な顕微計測技術である光学顕微鏡の歴史は古く,その起源は17世紀まで遡る.光学顕微鏡は生きた細胞を可視化できるため,生命科学分野での需要が高く,現在も高分解能化,高速化,多次元化など,様々な方向において活発な研究開発が行われている.細胞は基本的に無色透明であるため,可視化する際には,何らかの工夫を施す必要がある.しかし透明な媒質であっても,光が通過する際,その媒質の屈折率に比例した遅れがでる.この遅れ(光位相変化)を測定できれば,染色などの処理をせずに細胞を可視化できる.

本講義では,光学顕微鏡の歴史や,分解能の限界が何によって決まるのか,またそれを打破するいくつかの方法を示す.次に,光の位相分布を記録・再生できるホログラフィーに関して述べ,レンズを用いずに結像可能な,超小型デジタルホログラフィック顕微鏡に関して概説する.さらに,光波の位相情報を巧みに利用した光情報処理システムに関する最近の研究も紹介する.

キーワード

干渉計測,ホログラフィー,定量位相顕微鏡

レポート課題
  1. 光学顕微鏡の分解能の限界とそれを打破するための方法を説明せよ.
  2. 我々が普段使用しているカメラにおいて,立体情報を得られない理由を説明せよ.
  3. ホログラフィーではなぜレンズを用いずに結像ができるのか説明せよ.
実習日程
  • 12月19日(火)16:30-17:15
  • 12月20日(水)16:30-17:15
  • 集合場所:東9号館107号室
  • 実習内容:実験室見学と定量位相顕微鏡などのデモ

10月12日(木) 准教授 星野 太佑 先生

第1回講義:運動はなぜ体に良いのか -そのメカニズムとは-

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運動は体に良いと言われている。その理由を理解するためには、運動に対する2つの身体的応答を理解する必要がある。 1つは急性の応答 (acute)、もう1つは慢性的な応答(ここでは適応と言う) (chronic)である。 前者は運動一回に対する身体の応答、心拍数の増加、活動筋における糖取り込みの活性化などである。後者は定期的に運動を繰り返すことによる身体の適応である。 筋力トレーニングによる骨格筋量の増加などである。どのような慢性的な適応を獲得したいか、それに応じて、一回の運動の内容を考えることが重要である。 なぜなら1回の運動によりどのような急性の応答を誘導したかが、慢性的な適応を決めるからである。そこには刺激→シグナル伝達→転写→翻訳→特異的なタンパク質の増加という、生物学的に非常に重要な概念である「セントラルドグマ」が存在する。この運動による適応を生物学的な視点から理解した上で、もう少し広いスポーツ・健康科学の分野と情報理工科学との融合の可能性をみなさんと議論したい。

キーワード

運動、筋収縮、転写、翻訳、タンパク質、代謝

レポート課題
  1. 運動がなぜ体に良いのか、生物学的な視点から説明する。
  2. 自分が興味のある分野をスポーツ科学や健康科学に応用することで、どのようなイノベーションを起こすことができるのか考えを述べる。
実習日程
  • 12月13日(水)16:30-17:15
  • 12月21日(木)16:30-17:15
  • 集合場所:東6号館908号室
  • 実習内容:実験室見学と研究紹介

学内研究設備見学・実習の申し込み(受講者全員必修)

申し込みは締め切りました.

受講申し込みのお知らせ

申し込みは締め切りました.

ガイダンス

時間:10月5日(木)1限 

場所:A201

UECパスポートプログラムの目的とセミナーの内容をご案内した後,受講希望者数を調査します.