2022年度『サイエンス・コミュニケーション演習』

3年次(4年次)の上級科目として『サイエンス・コミュニケーション演習』を開講します。『UECパスポートプログラム』の一環として開講される本科目の目的は、科学の専門的な内容を他者に伝える具体的なアプローチの例を学び、今後、学生が自ら専門的な内容を他者へ発信できる能力を高めようとするものです。

受講生による講義紹介

全体を通して

『T・U類こそ受講しよう!』

本科目はV類向けに開講されている科目ですが、他類の学生も受講することができます。私はU類の所属ですが、今回幸運にも受講の機会をいただけました。履修の制約があるため普段はなかなか他類の科目を受講することはできませんが、本科目は集中講義であるため時間割が重なる心配は無用です。令和4年度は3人の専門講師の方をお招きし、科学の専門的な内容をどのように他者に発信すればいいのか サイエンスコミュニケーションについて学びました。事前に提出した課題をもとに講師の方から指導を受け、受講学生同士で交流もしました。私はV類の方とコミュニケーションをとる機会が今まであまりなかったので、とても新鮮な体験でした。私たちが作成する実験レポートは基本的に事実を記すに留まることから、自分の意見や考えを表現する機会はあまりないと思われます。私は現在3年生ですが、他者を意識するということがインターンシップや就職活動にも役に立っていると感じます。令和4年度は受講希望者多数のため選考がありました。この選考も他者に発信する練習の一つになったように感じます。ぜひ選考にチャレンジして、サイエンスコミュニケーションを体得してください。(K.U.さん)

『伝える、を実践的に学ぶ』

サイエンスコミニケーション演習では他ではあまり見られない「科学を伝える」ことを実践的に学ぶことができる特色的な授業でした.講師の方々は国立科学博物館の方からものつくりYoutuberに至るまで幅広く,柔軟で多角的な視野を学ぶことができました.各講師の先生の方のサイエンスコミニケーションに限らない興味深く魅力的なお話を聞くことができるだけでなく,演習のつく授業である通り,すべての時間で実際に生徒が発表を行う時間が設けられています.自分でプレゼンを行うことで,「伝える」ためには何が必要で何を工夫しなければならないのかをより深く理解することができました.また講師の方々における手厚いフィードバックもいただけるため,自分に足りない部分を知り,改善することもできました.これから研究者や科学者として人生を歩んでいく際に専門内外の人に自分の研究や成果を伝える場面からは避けて通ることはできないでしょう.科学技術に携わっていくひとりとしてこの授業で得た学びと経験は確実に今後役に立っていくのだろうと思います.(H.K.さん)

各講義を受講して

『供給より需要に沿う動画』
イチケン先生の講義
「YouTuberはどうやって動画を作っているのか!電気系ものづくりYouTuberの場合」より

1日目はYouTuberのイチケン先生をお招きし、「YouTuberはどうやって動画を作っているのか」というテーマでご講演いただきました。YouTubeの市場が拡大しYouTuberが職業として認められつつあるなかで、競争が激しくなっていることは言うまでもありません。当の先生も、いきなりYouTuber一本に絞って活動していくのはリスキーだとおっしゃっていたくらいです。激しい競争を制するために先生は非常に努力していらっしゃることが今回の講義で分かりました。端的に言えば、自分の気分のままに動画を撮っているわけではなく、視聴者の需要を分析し需要に沿った動画を出しているというわけです。動画の構成・タイトル・サムネイル一つに至るまで細心の注意を払っているとのことでした。広告収入の観点からも、閲覧してもらえるかどうかがほぼ全てです。講義では実際に自分が作りたい動画のサムネイルを疑似的に作成し、先生から直接ご講評を頂きました。私は現在3年生で、インターンシップへのエントリーの際に自己PR動画を提出することが度々あります。今後PR動画を作成する際は、まさに今回ご講評いただいたことが役立つことでしょう。(K.U.さん)

『【必見】ここだけは押さえろ!伸びるYoutube動画の作り方』
イチケン先生の講義
「YouTuberはどうやって動画を作っているのか!電気系ものづくりYouTuberの場合」より

電気系ものづくりYoutuberのイチケン先生に目をひくYoutube動画の作り方を伝授していただきました。授業の前半はYoutubeについての説明とYoutube動画がバズるために注目しなければならないポイントの解説をしていただきました。授業後半では生徒各自が事前に用意してきたYoutube動画の台本をもとに、目を引くサムネイルを考えました。最後には各自が考案したサムネイルとつくりたい動画の概要を簡単にプレゼンし、イチケン先生からの講評をいただきました。 先生の実際のご経験をもとにした講義は非常に興味深く説得力のあるものでした。Youtubeでバズるためには内容やタイトルもさることながら、サムネイルも非常に重要になってくることをご自身度体験したデータをもとに説明いただきました。そのうえで、人の目を引くシンプルだがインパクトのあるサムネイルの作成を受講者自身で考えることで実践的に「人に伝える」ことの楽しさを学びました。(H.K.さん)

『そのタイトルは読まれない?』
山岡均先生の講義
「天文学をみんなに届ける―基礎科学のサイエンスコミュニケーション」より

2日目は、国立天文台の山岡均先生の講義を受けました。国立天文台の情報発信がどのように行われているのかという講義を通して、どのような情報の発信の仕方が多くの人に伝わりやすいのかを学ぶことができました。天文学は、一般の人が身近に感じやすい学問である一方で、社会の役に立つことが少なく、毒にも薬にもならない学問であるという話が印象的でした。講義後半では、自分達で用意した記事にタイトルをつける活動を通して、どのようなタイトルが読まれるのか、内容が伝わるのかを考えました。初めに考えたタイトルは、難しい言葉が使われていたり、長過ぎたり、内容が伝わりにかったりしましたが、講義を通して新しくつけたタイトルは読まれやすいタイトルになりました。タイトルの付け方について印象的だったのは、「漢字6文字以上は読まれない」ということでした。このようなことを意識して、タイトルをつけ情報を発信していくことでより多くの人に伝えることができるということがわかりました。(S.K.さん)

『伝える相手に合わせた深さで』
山岡均先生の講義
「天文学をみんなに届ける―基礎科学のサイエンスコミュニケーション」より

2日目は国立天文台の山岡さんに基礎科学のサイエンスコミュニケーションについてお話していただきました。国立天文台の紹介から始まり、国立天文台の新旧の紹介動画をもとに人に科学を伝えることの難しさや、工夫を教わりました。最後に演習として、事前課題で準備してきたレポートについて同じグループの人に伝えられるか、どのような印象をもったかなどを議論して終わりました。動画を比較する部分では、明らかに後者の方が伝わるものが多く、わかりやすかったのはなぜなのかを考えながら進んでいきました。伝えたい側は伝えたい相手より知っていることが多い分、伝えたい相手に合わせて情報を選ぶ重要性を学びました。つい詳しく説明しすぎたり、説明しすぎたりしてしまいますが、説明を受ける側には専門用語や長い単語は伝わらないことが多いと教わりました。最後の演習では、自分がまとめた記事が初めて見る人にどれだけ伝わるのかを体感する演習になっていました。ただ伝わったかどうかだけでなく、タイトルをつけたりと伝えるためのひと工夫を丁寧に作業しました。どんな題材であっても相手を考えて伝えるということの大切さを学べる講義でした。(T.G.さん)

『様々な対象の方々に伝える技術を学ぶ』
前島正裕先生の講義
「博物館の展示を作るとしたら?」より

3日目は、国立科学博物館産業技術史資料情報センター長をされている前島正裕先生からお話を伺いました。前島先生からは、博物館での展示についてのお話を元にサイエンスコミュニケーションについてお話を伺いました。授業の前半部分では国立科学博物館についての説明や博物館での常設展や特別展についての説明、博物館はモノを通して伝える場所であるといった説明を伺いました。そして、後半では各自が博物館で印象に残ったものを発表するとともに伝えるテクニックについてのお話を伺いました。その中で特に印象に残ったものは世の中にはわからないから面白いと思っている人たちとわからないからつまらないと思っている人たちがいるというお話でした。研究者たちや分野に深い関心のある人たちは、わからないから面白いと思っていることが多いが一般にはわからないからつまらないと思っているということでした。その両方の人々にわかりやすく伝えるということはとても難しいと感じました。(K.K.さん)

『色々な小学生』
前島正裕先生の講義
「博物館の展示を作るとしたら?」より

国立科学博物館から前島正裕先生に登壇頂いた。先生によると、わからないものを観覧者と一緒に楽しむ側面と、理解が難しいものに簡単な解説を得る側面の両方を持つ場所が博物館の展示である。つまり、博物館は下から目線で共に同じ好奇心を未知のものに対して持ちすぎても良くないし、上から目線でわかりやすい解説を提供し続けるのみでもダメである。  先生は前者の「詳しい人、理解の速い人や好奇心旺盛な人」への要素も用意すべきという。まず、わかりやすい解説を作れば国から頂く予算の使用に満足してもらえる。しかしながら、知的好奇心の強い人たちを満たせない。この2つのバランスを小学生の目線から考えて再構築することが重要である。なぜなら大人でも思いつかない観点や疑問を提示してくれるのはいつも小学生くらいの子供達であるためだ。  この講義を受けて私は自分がわかりやすさを多少無視していることを恥じた。自分の好奇心さえ満たせればそれで良いという姿勢が大きすぎたと自省する。今後は一般小学生の目線も意識しつつ、わかりやすい説明も自分の言葉に組み込んでいく。そういったきっかけを頂いた授業となった。(K.T.さん)

ガイダンス

日程:7月25日(月) 5限 ⇒ スミ

場所:D棟101⇒ 新C-203に変更

『サイエンス・コミュニケーション演習』の目的,概要の説明を行います.同時に受講希望者数の調査を行います.

受講申し込み方法

GoogleClassroomの申込フォーム(7月中旬投稿予定)にてお申込み下さい

参加人数に上限があります。応募者多数の場合は選抜を行い、選抜結果を連絡します。

申し込み締め切り:8月2日(火)正午 ⇒ 受付け終了しました

講義日程

参加者は以下の日程で行われる専門講師による講演を聴講し,前後に出題される課題に取り組んでもらいます.

  • 9月26日(月),3-4限,[講義会場:新C棟103]
  • 講演者:
  •  電気系ものづくりYouTuber
  •    イチケン 先生

  • 9月27日(火),3-4限,[講義会場:新C棟103]
  • 講演者:
  •  国立天文台 天文情報センター長
  •    山岡 均 先生

  • 9月29日(木),3-4限,[講義会場:新C棟103]
  • 講演者:
  •  国立科学博物館 産業技術史資料情報センター長
  •    前島 正裕 先生

事前課題

提出期限:8月31日(火)

提出方法:GoogleClassroomの課題フォーム(7月中旬投稿予定)にて提出する形式を予定

講演案内

9月26日(月), 3-4限:イチケン先生

講演タイトル:

 YouTuberはどうやって動画を作っているのか!電気系ものづくりYouTuberの場合

講演概要:

日本人の10代~40代の約90%がYouTubeを利用していると言われています*1。このため個人だけでなく多くの企業や団体が情報発信の手段として利用が進んでいます。本講義ではプロの電気系ものづくりYouTuberがどのようにして普段動画を作っているのか, どのようにしてわかりやすい動画を作成しているのかをお伝えします。

9月27日(火), 3-4限:山岡均先生

講演タイトル:

 天文学をみんなに届ける―基礎科学のサイエンスコミュニケーション

講演概要:

天文分野は市民の関心が高く、注目を集める分野です。その一方で、実生活との関わりが乏しくて社会への成果還元が困難である(と思われがちな)分野でもあります。このような乖離は、どの分野であれ先端科学に共通の課題です。講義では、天文学での実践を実例にした科学コミュニケーションのさまざまな手法を紹介し、その有効性について考えていきたいと思います。さらに演習として、事前課題を活用した相互プレゼンテーションを予定しています。

9月29日(木), 3-4限:前島正裕 先生

講演タイトル:

 博物館の展示を作るとしたら?

講演概要:

博物館には,様々な年齢の,バックグラウンドも興味対象も異なる人々が来館します.その人たちに,展示を通して知ってほしい特定のテーマを,わかりやすく伝えるにはどうしたらよいでしょうか.科学・技術を伝える面白さと難しさをお話しします.

ページトップへもどる