令和元年度『サイエンス・コミュニケーション演習』

3年次(4年次)の上級科目として『サイエンス・コミュニケーション演習』を開講します。『UECパスポートプログラム』の一環として開講される本科目の目的は、科学の専門的な内容を他者に伝える具体的なアプローチの例を学び、今後、学生が自ら専門的な内容を他者へ発信できる能力を高めようとするものです。

受講生による講義紹介

全体を通して

『科学が身近なものであること』

サイエンス・コミュニケーションとは、あまり科学に馴染みのない人へわかりやすく科学を伝えることを意味します。将来、社会に出ると、専門分野の異なる人達と関わりながら仕事を進める必要が生じます。この授業では「伝える相手が誰なのか」「わかりにくい専門用語を多用していないか」「簡潔にまとめられているか」など、これから先も科学技術に携わる私たちにとって重要になるスキルを学ぶことができます。 1日目はサイエンスバーを経営する野村卓史先生による多種多様な分野のサイエンスコミュニケーションの講義でした。普段あまり考えないようなことにも興味を持てるようになりました。2日目は電気通信大学の近くにある国立天文台天文情報センターの広報室長である山岡均先生から基礎研究の重要さや、科学の3柱「使ってもらう」「研究」「知らせる」を学びました。そして3日目には科学技術振興機構の関本一樹先生から、グループワークを交えながらこれからの社会でどのように科学技術を役立てていくかを話し合い、社会と科学を繋げることを学びました。(H.Hさん)

各講義を受講して

『一般人の“面白い“の作り方』
サイエンスバー"INCUBATOR" 店主 野村卓史 先生
「飲食未経験だけどサイエンスバー開いてみた。」より

野村先生はサイエンスバーを開き、様々な困難を乗り越え、店を経営してきた経験から、一般の人に科学の楽しさを伝える実践的な方法や大変さ、楽しさを教えていただきました。講義前半ではバーの活動紹介、バーをはじめた経緯などを、講義後半では経営の実状や大変さなどを語ってくれました。中でもバーの活動紹介で科学者を招いて一般人がお酒を飲みながら研究の話を聞くというイベントが印象的でした。なぜなら科学者の研究の話というのは一般の人が聞いても理解できるものではなく、それを一般の人がお金を払ってまで聴きに来るというのは珍しいことだからです。ただ、その裏には野村先生の工夫と努力が隠されていたのです。例えば、打ち合わせを必ず行い、難しい言葉や英語を簡単な日本語に変えたり、1枚のスライドの情報量を少なくしたりするなど地道な作業をすることで一般の人の心をつかんでいたのです。そして、何より野村さんのお客さん、科学者全員に楽しんでほしいという思いを感じました。この事から科学を伝える上で、相手に理解してほしいという気持ちを持ち、試行錯誤して準備を徹底する事の重要性を学びました。(S.Y.さん)

『宇宙の謎を伝える』
国立天文台 天文情報センター 広報室長 山岡均 先生
「天文学を例にした科学コミュニケーションの実際」より

2日目には、天文情報センターで広報室長をされている山岡均先生からお話を伺いました。同じ空間で専門家と非専門家が直接コミュニケーションをとることを重視されていた一日目の野村先生に対し、広報室として広く一般向けの情報発信を業務とされている山岡先生は、動画やSNSなどを通したサイエンスコミュニケーションにも力を入れられていました。特に印象に残っているのは国立天文台の紹介動画の比較です。伝える内容は1つに絞り、長い文章は避ける。専門用語を使わないことはもちろん、人は6文字以上熟語を読まないという話には、確かにと思いました。また先生の話し方がゆっくり落ち着いていて聞きやすく、話を聞いてもらうには話し方も大切な要素の1つだなと学びました。(M.S.さん)

『科学コミュニケーションの新たな役割』
JST「科学と社会」推進部メディアグループ 主査 関本一樹 先生
「ミッションは「科学と社会をつなぐ」 -JST中堅職員の奮闘記-」より

最終日には、JSTの関本さんからサイエンス・コミュニケーションが、「目的として推進する段階」から「手段として活用する段階」へと変化しつつあるということを学びました。具体的には、従来の科学者と一般人を交えたグループディスカッションは、科学を知ってもらうために行っていました。しかし現在では社会と科学者が共同で研究および課題の解決をすることで、人類の更なる発展に繋げているとのお話を伺いました。演習では私達も未来を主題とするグループワークを行いました。その中で、班員と意見を共有して新たな問題の解決方法を模索することは非常に合理的な取り組みであること。そしてグループワークの後に他の班の発表を聞くことで、ブラッシュアップされた各班の意見を効果的に得られるということの2つを体感できました。(H.O.さん)

ガイダンス

日程:7月29日(月) 5限

場所:D棟101

『サイエンス・コミュニケーション演習』の目的,概要の説明を行います.同時に受講希望者数の調査を行います.

受講申し込み方法

下記の情報をパスポートプログラム連絡窓口contact © passport.uec.ac.jp (© をアットマークに変更)まで送ってください.メールでのお申込み以外に履修登録は必要ありません.参加人数に上限があり,応募者多数の場合は選抜を行います.選抜結果は別途メールにて連絡します.

申し込み締め切り:8月2日(金)(※受付終了しました)

  • 件名:サイエンスコミュニケーション演習申し込み
  • 学籍番号,氏名,類・プログラム(研究室)
  • 受講理由
  • 将来どのような仕事に携わりたいか
  • 自己PR(任意)

講義日程

参加者は以下の日程で行われる専門講師による講演を聴講し,前後に出題される課題に取り組んでもらいます.

事前課題

  • 野村卓史 先生クリック
  • 山岡 均 先生クリック
  • 関本一樹 先生クリック

提出期限:8月31日(金)(※受付終了しました)

提出方法:下記宛先に郵送(提出期限必着),または東1号館3階エレベータ前のポストに紙面にて提出ください.学籍番号,氏名を必ず明記すること.
〒182-8585
 東京都調布市調布ヶ丘1-5-1
 電気通信大学東1-3階物理事務気付
 『サイエンス・コミュニケーション演習事前課題』

または電子ファイル(WORDまたはPDF.イラスト等の課題は,PDF化する際,高解像度で変換のこと)にて,パスポートプログラム連絡窓口contact © passport.uec.ac.jp (© をアットマークに変更)まで送ってください.

講演案内

9月24日(火), 3-4限:野村 卓史 先生

講演タイトル:飲食未経験だけどサイエンスバー開いてみた。

講演概要:

5年ほど前、理学部出身・生物系の30歳(当時)の男が、突然サイエンスなバーを開業した。 開業に至る経緯、開業後の苦労話とやりがい、予期しなかった仕事の広がり等、 当事者だからこそ語れるエピソードを通じて科学コミュニケーションの実践について学ぶ。

9月25日(水), 3-4限:山岡 均 先生

講演タイトル:天文学を例にした科学コミュニケーションの実際

講演概要:

天文分野は市民の関心が高く、注目を集める分野です。その一方で、実生活との関わりが乏しくて社会への成果還元が困難である(と思われがちな)分野でもあります。このような乖離は、どの分野であれ先端科学に共通の課題です。あなたの分野、どう思われているでしょうね? 講義では、天文学での実践を実例にした科学コミュニケーションのさまざまな手法を紹介し、その有効性について考えていきたいと思います。

9月26日(木), 3-4限:関本一樹 先生

講演タイトル:ミッションは「科学と社会をつなぐ」 -JST中堅職員の奮闘記-

講演概要:

科学コミュニケーションとは、そもそも何のために存在するのでしょうか。 色々な答えが思い浮かぶ中で、私は「科学と社会をつなぎ」「より良い未来を実現する」ことを目指して取り組んでいます。 では、実際の現場ではどのようなことが行われているのか。 文系・元商工会議所職員の私は、ある日突然科学コミュニケーションの世界へと飛び込みました。 中堅職員として働く日々の体験談を交えながら、JSTの取り組みをご紹介します。 私たちの生活を便利にし、日々を豊かなものにしてくれてきた科学技術には、これからも大きな期待が寄せられています。 社会の中で科学技術をもっと役立てていくために、必要なことを皆さんとともに考えていきたいと思います。

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