平成27年度『サイエンス・コミュニケーション演習』

3年次(4年次)の上級科目として『サイエンス・コミュニケーション演習』を開講します。『UECパスポートプログラム』の一環として開講される本科目の目的は、科学の専門的な内容を他者に伝える具体的なアプローチの例を学び、今後、学生が自ら専門的な内容を他者へ発信できる能力を高めようとするものです。

受講生による講義紹介

全体を通して

科学を伝えるためには

「サイエンス・コミュニケーション演習」という名前の通り、この講義では「科学的な事柄についていかに他者にうまく伝えるか」ということを中心に学びます。ある学会で研究成果を発表したところ、拡大解釈がなされたり誤解を招くような表現で新聞記事になったりしてしまった、といった科学コミュニケー ションがうまく取れなかったことが原因の問題が少なくありません。現代の科学者に求められていることは、素晴らしい研究をすることだけではなく、科学研究にあまり縁のない一般市民にも分かりやすく、そして正確に伝えることの出来るスキルなのです。また、科学者から一般市民、といった一方通行ではなく、一般市民が科学者に気軽に関われるような環境を整えることも必要です。この講義では、講師から一方通行で話を聞くだけでなく、学生側も実際にポスターを制作したり、科学的な事柄について発表を行なったり、自らの手を使って学んでいける講義です。(3年 R.Y.さん)

各講義を受講して

理解の深さを重視する
 国立科学博物館 理工学研究部 科学技術史グループ グループ長 前島正裕先生
 「科学リテラシーの向上と博物館の展示」より

前島正裕先生の講義から学んだことの中で、私が重要であると考えたことは、「人に何かを伝えるときは、必ず「相手」を意識する」ということです。相手が小学生か大人なのか、理科系なのか、文化系なのか、それによって物を伝えるときに必要な要素はそれぞれ違います。受け手がどのような人なのかを定めることで、伝えるべき内容は明確でわかりやすいものになるということです。国立科学博物館では、展示の一つ一つが、一方的な情報の発信ではなく、細かい情報をあえて隠すことで、受け手に発見の楽しさ、好奇心を芽生えさせる工夫がなされています。実は、これも相手を意識した伝え方の応用で、科学の知識のない人にとってはただの面白いアトラクションだったものが、専門知識のある人から見ると学術的なテーマが隠されていることに気付き、理解の深さに応じて展示をより深く味わうことができるのだと思います。(4年 D.K.さん)

科学コミュニケーションとは
 自然科学研究機構 研究力強化推進本部 特任教授 小泉周先生
 「「研究者による科学コミュニケーション」課題と演習」より

2日目にいらっしゃった自然科学研究機構の小泉先生からは科学コミュニケーションができるまでの歴史や科学者の歴史、間違って伝わってしまうプレスリリースの話などを伺いました。理系学生は歴史を嫌う人が多いと思いますが、科学者と国と社会がどのように結びついてきたのかを知ることが出来て科学者の社会に対する責任がどのようにして生まれてきたのかを認識することの出来るいい機会となりました。また科学コミュニケーションが重要視されてきたのは本当に最近のことで狂牛病のニュースが1つのきっかけであったことは知りませんでした。科学コミュニケーションの実践例や日本で浸透していない理由などを聞けたことも理系の人間として有意義でした。何より、プレスリリースの内容が間違ってマスコミに伝わってしまう話や比喩表現の注意点など表現することにおいて注意すべき点の多さに衝撃を受けました。(3年 K.T.さん)

絵で科学を伝える
 はやのん理系漫画制作室 小林早野 先生
 「伝わる!理工系イベント告知のためのチラシ・ポスター術」より

サイエンスコミュニケーション演習三日目は、はやのん理系漫画制作室、小林早野先生のお話を聞きました。前半は、先生のユーモア溢れる自己紹介を聞きました。はやのん先生はなぜ理系になったのか、なぜ漫画家になったのか等の詳細を漫画にして自己紹介をしていたのですごく印象に残り、楽しく話を聞けました。後半の講義では、理工系イベント告知の為のポスター術と事前課題として作った2015年度の調布祭のポスター案の講評をしてくださいました。ポスターを作る際の大事なポイントは、対象者が誰なのかを明確にし、対象者にあった絵と情報を載せることだと学びました。また、はやのん先生の講義を通じてサイエンスコミュニケーションの手段は、口で説明するだけでなく、漫画やポスターで説明することもできることに気付かされました。対象者が子供や科学に無関心な人達には、口で説明するよりも絵にして説明したほうが理解してもらえるだろうなと思いました。(3年 K.M.さん)

ガイダンス

日程:7月23日(木) 5限 (予定.決定次第更新致します.)

場所:D棟101

『サイエンス・コミュニケーション演習』の目的,概要の説明を行います.同時に受講希望者数の調査を行います.

講義日程

参加者は以下の日程で行われる専門講師による講演を聴講し,前後に出題される課題に取り組んでもらいます.

事前課題についてはこちら

当日のプレゼンテーションファイル

講演案内

9月28日(月), 3-4限:前島正裕 先生

講演タイトル:科学リテラシーの向上と博物館の展示

講演概要:

科学系博物館のミッションの一つに、国民の科学リテラシーの向上がある。
国立科学博物館では、常設展示の一部を更新し、本年7月14日にリニューアルオープンをした。本講義では新しい展示の中から、「科学技術で地球を探る」コーナーを取り上げ、多様な来館者に対応する展示の工夫について考える。
常設展示の制作過程は、研究論文執筆と似ているところがあり、理工系学生諸君の研究活動にも有効と考える。

9月29日(火), 3-4限:小泉周 先生

講演タイトル:「研究者による科学コミュニケーション」課題と演習

講演概要:

第4期科学技術基本計画において、研究者による科学コミュニケーションの重要性が言われはじめてから、すでに5年近くたった。同基本計画により、「一定額以上の国の研究資金を得た研究者に対し、研究活動の内容や成果について国民との対話を行う活動を積極的に行うよう求める」とする施策が示され、実際に、大学や研究機関における研究者の科学コミュニケーションは活発となっている。
しかしその一方で、研究者による科学コミュニケーション活動を行う際の課題も明らかとなってきており、科学コミュニケーション活動を促進するためには、組織的な支援も大切であることがより明確となっている(研究者による科学コミュニケーション活動に関するアンケート調査報告書(2013年7月)(JST))。
そこで、様々な支援策が検討されているが、その一環として、「国民との対話」を促すための研究者の科学コミュニケーション研修が注目されている。今回、研究者の立場で、どのように科学を伝えるのか、その際の課題やノウハウについて、演習形式で共有するとともに、これからの「研究者による科学コミュニケーション」活動のあり方について、考えてみたい。

9月30日(水), 3-4限:はやのん 先生

講演タイトル:「伝わる!理工系イベント告知のためのチラシ・ポスター術」

講演概要:

理工系の研究・イベントを紹介するポスターや漫画を描く仕事をしている「理系漫画家はやのん」による理工系学生のためのチラシ・ポスター制作術講座。
これからの学生生活中・就職後にあるかもしれない「幅広い層の人々に理工系イベントに参加してもらうためのポスターをつくりたい」「学内・学会内・会社内でのお知らせのポスターをつくる係になってしまった!」という時に役立つテクニックや理論を紹介します。

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