平成28年度『サイエンス・コミュニケーション演習』

3年次(4年次)の上級科目として『サイエンス・コミュニケーション演習』を開講します。『UECパスポートプログラム』の一環として開講される本科目の目的は、科学の専門的な内容を他者に伝える具体的なアプローチの例を学び、今後、学生が自ら専門的な内容を他者へ発信できる能力を高めようとするものです。

受講生による講義紹介

全体を通して

科学こそコミュニケーションが必須

科学を伝える様々な手法の中から、今回はイラストや動画、ホームページを使って世の中に最先端の科学を発信している方々からお話を伺いました。全てに共通 して感じたことは、コミュニケーションにはきちんとした技術が必要であり、それを知らずに「分かりやすく伝える」ことには限界があるということです。どの 先生方も斬新なアプローチで科学を人に伝えており、人と円滑に会話が出来る「コミュニケーション能力」を超えて、どんな人にも面白く科学を伝える「コミ ュニケーション技術」について学ぶことが出来ました。理系の専門分野を突き詰めていく大学ではめったに学ぶことが出来ないような内容ばかりで、とても面白 く新鮮な授業でした。それと同時に、専門知識があることでその説得力が増すことから、いかに研究の最先端の現場にいる人たちがこのコミュニケーション技術 を学ぶ必要があるかを考えさせられました。是非多くの理系学生に受けて欲しいです。(M.U.さん)

各講義を受講して

イラストでの工夫
 有限会社 彩考 代表取締役 佐藤良孝先生
 「医学を伝える技術 −メディカルイラストレーションの実態と表現方法−」より

メディカルイラストレーションと聞いたとき、理科の教科書や資料集にあった解剖図などを想像した。しかし、メディカルイラストレーションは、解剖図のように見たものをそのままイラ ストにするのではなく、見た人に伝えたいことを伝わりやすいように工夫されていた。様々あったイラストの技法の中でも、私が特に気になったのが、伝えるべきことを強調、わかりや すくするために正確にその様子を描写しながら、いらない部分を省略していることである。人間の手術などの様子は、写真で見るととても複雑でとてもわかりにくく、その写真を見せられ てもとてもわかりづらい。しかし、イラストは分かりやすく、すべてを描かず、大切な部分のみが描かれていた。大切な部分のみを選び取って描くのは非常に難しいと感じるが、人に言葉 で伝える場合においても、大切な情報のみを選び伝えるというのは難しいことであり、同時に大切なことであると感じた。(U.M.さん)

気持ちの流れを考える
 物質・材料研究機構(NIMS) 経営企画部門 広報室 室長 小林隆司先生
 「恋愛下手?それじゃ科学は伝わらない 〜何が人をその気にさせるのか〜」より

 小林先生の講義では「相手の気持ちをコントロールする」ということについて実習を通して学んだ.
 映像は「時間の経過」によって「気持ちの流れ」の流れを発生させる.その「気持ちの流れ」を利用して「相手の気持ちをコントロール」し,伝えたいことを理解してもらうためのテクニックを3つ紹介された.@最終的になってもらいたい相手の気持ちからストーリーを組み立てていく逆算,A最も伝えたい情報を選んで伝えるキーワードの発見,B話の全体を説明してから詳細を説明していく塗り絵方式について具体例の紹介や実際にストーリーを組み立てていくなかで体験した.
 実習のなかでも,科学番組のストーリーを考えるものが印象に残った.とある製品についての紹介をスライド10枚程度にわけてそれを並べ替えるものである.自分で考えたものと模範解答のVTRではいくつか違いがあり,順番を変えるだけで商品の印象が変わることを実感できた.(Y.N.さん)

目的と標的と大衆
 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 航空技術部門 事業推進部 計画マネージャ 寺澤勝也 先生
 「JAXA広報活動の理解による科学コミュニケーション手法の習得」より

3日目の講義では情報発信の目的とターゲットを考えて発信することについて学びました。情報の発信はそもそもより多くの人々に広く知ってもらうことで利 益や予算を得たり人材を集めるために行うものであることです。そのための適切な情報発信をする必要がありますがあくまで発信自体が目的ではないことを意識 することが大切だと学びました。事実以外を伝えるのは厳禁ですが見せ方によって情報の伝え方を工夫することが重要です。ただ強調と誇張の線引きが難しいの でやりすぎないようにしなければなりません。また情報発信のターゲットによって方法を工夫することが有効であると学びました。専門的知識の少ない多くの人 々に知ってもらうために、まず科学的意義より社会的意義を伝えることで興味を持ってもらうことが有効です。自分の思う客観視は普通と若干ずれているため、 今後は読み手のことを考えてターゲットの考えを掌握できるように努力したいと思います。(N.K.さん)

ガイダンス

日程:7月28日(木) 5限

場所:D棟101

『サイエンス・コミュニケーション演習』の目的,概要の説明を行います.同時に受講希望者数の調査を行います.

受講申し込み方法

下記の情報をパスポートプログラム連絡窓口contact © passport.uec.ac.jp (© をアットマークに変更)まで送ってください.メールでのお申込み以外に履修登録は必要ありません.参加人数に上限があり,応募者多数の場合は選抜を行います.履修の受付完了者には返信メールをお送りします.

申し込み締め切り:申し込みは締め切りました.

  • 件名:サイエンスコミュニケーション演習申し込み
  • 学籍番号,氏名,学科コース(研究室)
  • 受講理由
  • 将来どのような仕事に携わりたいか
  • 自己PR(任意)

講義日程

参加者は以下の日程で行われる専門講師による講演を聴講し,前後に出題される課題に取り組んでもらいます.

事前課題

  • 佐藤良孝 先生クリック
  • 小林隆司 先生クリック
  • 寺澤勝也 先生クリック

提出期限:9月15日(木)

提出方法:下記宛先に郵送(提出期限必着),または東1号館3階エレベータ前のポストに紙面にて提出ください.学籍番号,氏名を必ず明記すること.
〒182-8585
 東京都調布市調布ヶ丘1-5-1
 電気通信大学東1-3階物理事務気付
 『サイエンス・コミュニケーション演習事前課題』

または電子ファイル(WORDまたはPDF.イラスト等の課題は,PDF化する際,高解像度で変換のこと)にて,パスポートプログラム連絡窓口contact © passport.uec.ac.jp (© をアットマークに変更)まで送ってください.

講演案内

9月28日(水), 3-4限:佐藤良孝 先生

講演タイトル:「医学を伝える技術 −メディカルイラストレーションの実態と表現方法−」

講演概要:

これまでに積み上げられてきた医学研究・教育では、文字情報以外に視覚情報による記録・伝達が不可欠でした。
これらはもっぱら絵画(イラストレーション)、後に写真が加わって表されてきましたが、 現在では各種の可視化機器が発達し、内部の状況や微細な空間まで描出され、医療・医学の現場で大きな役割を担ってます。
しかし、そのような状況でもメディカルイラストレーションの必要性は無くなっていません。
そこには人が介在しなければ創れないイメージ、内容や本質を的確に「表現」し、人に伝える必要があるためです。
メディカルイラストレーションを日々制作している立場から、実際の制作プロセスや個別の事例、作品の紹介をおこないながら、 解剖、病態生理、手術手技、研究内容の可視化など、様々な場面で視覚表現される「医学を伝える技術」を解説します。
後半は事前課題を用いて、表現に至るプロセスを検証し、「もの」や「こと」を的確に表現し伝達するための基本を共に考えます。

9月29日(木), 3-4限:小林隆司 先生

講演タイトル:恋愛下手?それじゃ科学は伝わらない 〜何が人をその気にさせるのか〜

講演概要:

恋愛講座ではありません。
科学を伝える。研究成果を伝える話しです。
専門家以外の人に科学を伝えるとき、重要なのは「論理的」であることでしょうか。 本当はそれ以上に大切なのに、ほとんどの科学者が無視していることがあります。 反対に、テレビ番組をつい最後まで見てしまう理由はなんでしょうか。ぜひ、当日まで考えてから出席してください。キーワードは「逆算」です。
考えたこともなかった、伝える技術。テレビが使うあの手とこの手、その一部をお伝えします。
この講義で、みなさんの持つ「コミュニケーション」の意味がガラリと変わるのではないでしょうか。本にも教科書にもない『伝える技術』。体感していただきましょう。

9月30日(金), 3-4限:寺澤勝也 先生

講演タイトル:JAXA広報活動の理解による科学コミュニケーション手法の習得

講演概要:

「情報発信」は、「誰を対象にして、情報発信によって何を期待するのか」という「目的」を明確にして行うことが重要であり、また、発信する情報については、その背景や対象とする研究内容の本質によって、情報発信の方法・形態が異なってくることもある。
情報発信に関する基本的考え方と目的・ターゲットに応じた手法、及び、発信する情報の本質的な内容に応じた手法が必要である旨を、JAXAの広報活動の具体的事例に基づいて解説する。
「JAXA広報活動の基本」の理解は、「研究者による科学コミュニケーション活動のあり方」に直結するものである。JAXA広報活動の具体的理解によって「科学の専門的な内容を他者に伝える具体的なアプローチ方法の習得」に結び付けていただきたい。

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